ブ―――・・・ブ―――・・・


授業中、ポケットに入れた携帯が震えた。

先生に見つからない様、机の影に隠しながら受信メールを開く。


送信者の欄には『不二周助』、タイトルは『無題』。

周助?なんだろ・・・何か用事かな?




『今夜、空いてる?』




傍から見れば何とも意味深なメールだが、私と周助はそんな関係ではない。

只の幼馴染。―――そう。周助にとって私はそれ以上でも、それ以下でもない。


なのに気持ちが高ぶるのは私にとって周助はそうではないからで、だからと言って別に何も期待はしない。




『うん、大丈夫。』




だけどこの頃、幼馴染という居場所に息苦しさを感じるのは私が少し大人へと近付いたから・・・なのかもしれない。












         
At the night of the Star Festival (11.幼馴染だから・・・)












―――ピンポーン・・・


早めに夕食を済ませ部屋でテレビを見ているとインターホンが鳴った。

玄関先には周助の姿があり、いつもの様に母と何やら世間話をしている。



玄関を出ると、外には周助の自転車が止めてあった。




「あれ?自転車なんか持ってきてどうしたの?」


「うん、ちょっと付き合って欲しい所があるんだ。」


「何処?」


「ふふ・・・秘密。着いてからのお楽しみ、さぁ後ろ乗って。」


「え!?」


「いいから早く。」




言われるが儘に後ろの荷台へと座り、周助の肩に手を添えた。

ゆっくりと自転車は進み出し、私は周助の後ろで一人頬を赤らめる。


もう周助との付き合いは10年以上になるが、自転車の二人乗りをしたのは始めてだ。




「周助、大丈夫?私こごうか?」


「平気だよ。ボクにだってこれ位の力はあるよ。」


「だてにテニスで鍛えてないもんね!」


「そうだね。・・・ごめん、肩じゃなくて腰に手回してくれる?腰の方がこぎやすいから。」


「・・・うん。」




そんなこと簡単に言えるのは、やっぱり私が幼馴染でしかない証拠だね。

―――それ以上でも、それ以下でもない・・・只の幼馴染。


胸に刺さった棘をそのままに、そっと周助の腰に手を回した。








幾分か時間は過ぎ、郊外を抜けて少し行った所で自転車は緩やかに止まった。




「さぁ、着いたよ。」




周助から手を放し、自転車から降りた私が見たのは広々とした草っ原。

そして、さっきまで周助の背中で隠れて見えなかった空には綺麗な星空が広がっていた。




「綺麗・・・」


「気に入ってくれたみたいだね・・・じゃあ、今日は何の日か知ってる?」


「えっ?」




今日・・えっと7月・・7日・・・今日は七夕か!

子供の頃、周助と短冊に願いを書いて笹に飾ったっけ。



それにしても綺麗な星空・・・東京でもこんな星空見れるんだ。

星空を見上げる私とは対象的に、周助は地面に腰を下ろし満足そうに私を見ている。




「なに?」


「・・・なんでもないよ。」


「そ、そう。」




星空の下、星ではなく私を見つめる周助の目があまりにも優しくて、それ以上目を合わせている事が出来なかった。

ずるいな・・・周助。七夕の夜に呼び出して、そんな目で見ないでよ。



―――幼馴染としか思ってないくせに。



つい目頭が熱くなり、気付かれないようにそっと目元を拭った。

だけど一度拭ってしまった涙は止められなくて頬を伝う。




?」




―――そんな優しい声で呼ばないでよ。余計に涙止まらなくなっちゃうじゃない・・・




「ごめん・・・あんまり星が綺麗でつい・・・ねっ」




―――上手く笑えているだろうか・・・




「・・・。」


「・・・。」


「そろそろ帰ろうか。」


「そうだね。」




勘のいい周助は、もしかしたら私の気持ちに気が付いたかもしれない。

だけど、それを口にしないのは私を只の幼馴染としか思ってない証拠で、それを伝えない私は何も期待していないから





                                  -Fin-











*あとがき*

七夕ドリームです。ほぼ七夕関係ナイじゃん(汗)
ハッピーエンドにするつもりが、気付いたら切ない系に(ワラ)
結局中途半端な作品でスミマセン。。
(07.07.07)←777だ♪